昨今、増加する空き家が問題となっていますが、住宅政策の大幅な転換により、実は中古住宅市場は拡大傾向にあります。
この記事では政府の対策を紹介しつつ、なぜ中古住宅が売りやすくなるのかお伝えします。
増加する空き家
総務省が2015年2月に発表した「住宅・土地統計調査」によれば、2013年10月1日現在における日本の総住宅数は6,063万戸で、このうち空き家は820万戸。
総住宅数に占める空き家率は13.5%と過去最高になり、7~8軒に1軒が空き家という状況です。
(図版引用)総務省統計局「空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について」
5年前と比較すると空き家は62.8万戸増加しており、建て方別の内訳をみると、一戸建ての空き家が49.6万戸で79.0%を占めています。
また2015年6月に発表された野村総合研究所の発表によると、2033年には空き家数は約2,150万戸、空き家率は30.2%にまで上昇すると予測しています。
空き家増加の原因としては
- 新築住宅の供給過剰
- 少子化の進行により、住宅を相続する子供の減少
- 日本人の新築志向の強さ
などが挙げられます。
中古住宅に対する政策が大幅に転換
市場に流通している住宅ですが、海外と日本では大きな違いがみられます。
日本の場合、新築8:中古2
欧米の場合、新築2:中古8
従来の消費者社会において、日本人は新築志向が強くありました。
この志向は中古住宅に対する資産価値にも影響を与え、
「木造住宅は築20年以上なら価値は0円」
「マンションなら築25年以上で価値が激減」
という評価方法が慣例でした。
しかし、こうした新築志向の状況も変わりつつあります!
なぜなら従来の「つくっては壊す」消費型の社会から、「良いものをつくって、きちんと手入れして、長く使う」ストック型の社会へ展開を図るために、政府が住宅政策を大幅に転換したからです。
具体的には
- ホームインスペクションの普及
- 既存住宅売買瑕疵保険の整備
- 住宅履歴の整備
- 長期優良住宅リフォームの推進
- 空き家対策特別措置法
などの対策が取られるようになりました。
空き家対策特別措置法とは
特に空き家問題を解消すべく、2015年5月より施行されている「空家等対策の推進に関する特別措置法」の影響は大きいものがあります。
「空き家対策特別措置法」とは
- 倒壊の恐れがある
- 衛生面で有害
- 著しく景観を損なっている
などに該当する「特定空き家」に認定されると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるとともに、市町村が撤去を命じることが可能になるというものです。
「特定空き家」に認定されるのを避けるために、空き家を早めに売ろうと考える人も出てきています。
中古住宅に対する価値の捉え方は変わり始めている
自民党の中古住宅市場活性化小委員会が2015年5月に発表した「中古住宅市場活性化に向けた8つの提言」にも注目すべきです。
提言4には、「担保評価を含む “20年で一律価値ゼロ” とみなす市場慣行の抜本的改善」が取り上げられています。
適切な補修を行えば、基礎・躯体の機能が失われていない限り、住宅の使用価値は回復・向上するというのがこの提言の考え方です。
これは人間も同じ。
たとえば同じ50代男性でも、食事や運動に気を付けている人とそうでない人とでは、身体の価値(健康状態)が異なります。
つまり慣例に従った一律評価ではなく、建物の価値に応じた価格をつけようというものです。
こうした提言を受けて、2015年7月には住宅の性能などを的確に反映した価格査定を行うための「既存住宅価格査定マニュアル」(公共財団法人 不動産流通推進センター発行)が改定されています。
特に「戸建住宅価格査定マニュアル」では、国の「中古戸建住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を反映し、耐用年数の見直しやリフォーム状況の反映部位を拡大させるなどの改訂が行われています。
このマニュアルが本格的に不動産屋に活用されるのはもう少し先かもしれませんが、国をあげて中古住宅を活性化しようという方向に動いていることは確かです。
中古住宅市場の拡大
こうした住宅政策の大幅転換により、最近では低価格な空き家を積極的に購入し、リフォームやリノベーションを楽しむ人が増えてきました。
1998年と2008年の総務省の「住宅・土地統計調査」結果を比較すると、この10年間で築28年~37年の中古住宅の流通割合が明らかに増加しています。
そのため、これから家を売ろうとする人は
「中古一戸建てだから売れないんじゃないか…」
「中古マンションだから人気がないんじゃないか…」
と過度に心配される必要はありません。