この記事では「既存住宅売買瑕疵保険」について紹介します。
既存住宅売買瑕疵保険とは
既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅に瑕疵(かし)が見つかった時に補修費用をカバーするための保険です。
新築の建物の場合、売主であるハウスメーカーや施工会社が10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務づけられています。
また中古の建物の場合でも、売主が不動産屋の場合、2年間の保証をつけることが義務づけられています。
この期間に通常は発見できないような瑕疵=欠陥が見つかった場合には、買主は売主に対して損害賠償を請求したり、売買契約を解除したりができます。
しかし中古住宅の売買では売主が個人である場合が多く、保証内容は売主によって異なります。
もっと言ってしまえば、保証内容は売却を依頼した不動産屋の慣例に従うことが一般的です。
引き渡し後に発見された雨漏りやシロアリの被害といった瑕疵については、3カ月以内だけ売主が責任を負うという取引が多いですが、「瑕疵担保免責」つまり「保証なし」での取引も決して少なくありません。
「売った後まで責任を負いたくない」と考える売主の気持ちは同じ立場の者としてよく分かりますが、これでは買主が不安を感じて購入に踏み切れない気持ちも分かります。
そこで登場したのが「既存住宅売買瑕疵保険」です。
あくまでも任意保険の位置付けですが、加入することで、引き渡し後に発生した構造的な不具合に対し1,000万円までの補修費用が最長5年間保証されます。
保険対象
- 柱・基礎などの構造耐力上必要な部分
- 外壁・屋根などの雨水の侵入を防止する部分
- 給排水設備、電気設備(対象外の保険会社もあり)
なぜ既存住宅売買瑕疵保険が中古住宅を売りやすくするの?
中古住宅を高く早く売りやすくする方法があります。
それは
- 「ホームインスペクション」を行い
- 「既存住宅売買瑕疵保険」に加入できるようにし
- 「住宅履歴」を整備すること
中古住宅の購入を検討している買主にとっての不安要素といえば
「建物や設備の状況がわからない」
「耐震性がわからない」
「保証が短い(もしくは無い)」
ということです。
しかし逆を言えば、こうした不安要素が解消された物件ならば、買主は相場より多少高い金額であったとしても、気に入れば購入してくれます。
上記3つの方法を行うことで
- 物件に付加価値がつく
- 家の詳細な状況が分かる
- 家の安全性が証明される
ため買主も購入しやすくなり、場合によっては相場よりも高く売却できます。
この記事で紹介している既存住宅売買瑕疵保険付きの中古住宅であれば、万が一欠陥が後から見つかった場合でも補修費用などが保険金でまかなわれるため、買主としては安心して購入に踏み切れますし、売主としても賠償金の心配をしなくて済むので安心です。
上図は、新築・リフォーム・中古すべての合計データですが、住宅瑕疵担保責任保険証券発行件数が右肩上がりであることからも、住宅購入への安心材料として、瑕疵担保責任保険の活用が広がりつつあることが分かります。
既存住宅売買瑕疵保険への加入が住宅ローン減税の要件に
既存住宅売買瑕疵保険への加入が様々な税金の特別控除の適用要件に追加されていることも忘れてはいけません。
たとえば住宅ローン減税の要件に当てはまる住宅は
「木造なら築20年以内」
「マンションなら築25年以内」
ですが、既存住宅売買瑕疵保険に加入できる物件ならば、築年数がより古い物件であっても住宅ローン減税が適用されます。
私たち売主には関係ないと思われるかもしれませんが、住宅ローン減税は実質400万円の値引きに相当するので、既存住宅売買瑕疵保険に加入できる物件ならば買主へのアピールポイントとなります。
瑕疵担保責任保険の加入方法
保険会社はどこ?
既存住宅売買瑕疵保険を取り扱っている保険会社は、国土交通省から指定されている以下の5社だけとなっています(2016年4月現在)。
- 株式会社住宅安心保証(http://www.j-anshin.co.jp/)
- 住宅保証機構株式会社(http://www.mamoris.jp/)
- 株式会社日本住宅保証検査機構(http://www.jio-kensa.co.jp/)
- 株式会社ハウスジーメン(http://www.house-gmen.com/)
- ハウスプラス住宅保証株式会社(http://www.houseplus.co.jp/)
既存住宅売買瑕疵保険に加入するには、家の検査を受ける必要があります。
検査機関はどこ?
検査機関は一般社団法人 瑕疵担保責任保険協会が運営する「登録事業者等の検索サイト」(http://search-kashihoken.jp/)で検索できます。
またホームインスペクションを提供している会社の中には、オプションサービスとして既存住宅売買瑕疵保険検査を提供しているところもあります。
検査では「基礎のひび割れや欠損の状況」「外壁の防水措置の状況」などを確認します。
検査にかかる時間は1~2時間。
その後、数日以内に検査結果が送られてきて、既存住宅売買瑕疵保険に入れるかどうかが決まります。
瑕疵担保責任保険の費用
既存住宅売買瑕疵保険の検査費用は、インスペクションとまとめて行える会社の場合なら両方合わせても10万円以内に収まります。
実際に既存住宅売買瑕疵保険に加入するには、4~8万円の保険料がかかります。
なお検査・保証依頼は売主だけでなく買主からも可能なので、買主に支払ってもらい加入してもらう方法もあります。
既存住宅売買瑕疵保険を活用してくれる不動産屋を探そう
せっかくの既存住宅売買瑕疵保険を家の売却活動で利用するなら、有効活用できる不動産屋を探す必要があります。
残念ながら、既存住宅売買瑕疵保険の仕組みを知らない不動産屋も多いです。
不動産屋と媒介契約を結ぶ前に「既存住宅売買瑕疵保険というのを耳にしたのですが、何ですか?」などと、あえて話題を振ってみるのもおすすめです。