日本の不動産の世界では、転勤などで一時的に空き家となる家を、期間を定めて貸すサービスのことを「リロケーション」と呼んでいます。

この記事では、そんなリロケーションサービスの中身について詳しくご紹介していきます。

リロケーションは「定期借家契約」と「転貸借方式」で広がった

リロケーション

リロケーションは元々アメリカで生まれたサービスで、本来は移転・配置転換(転勤)を総合的にサポートするサービスを指します。

そのため移転・配置転換(転勤)で生じる留守宅を賃貸するだけではなく、幅広いサービスが提供されています。

一方、日本でのリロケーションは転勤者の留守宅を賃貸し管理するサービスとなり、ニュアンス的には不動産サービスに限定したもの(管理会社によって付帯する不動産以外のサービスも揃っています)となっています。

リロケーションサービスは「定期借家契約」の解禁で普及した

リロケーションサービスは、定期借家契約にもとづき賃貸契約を交わします。

なぜなら一般的な賃貸借契約(普通借家契約)で契約すると、貸す側の意向に沿った賃貸契約ができないため、サービスの特性を生かした契約ができないからです。

はじめから期間が定まった定期借家契約のほうが、不動産の所有者や貸す側にとって都合が良いのです。

たとえば一般的な賃貸借契約(普通借家契約)で契約した場合、何らかの都合で建物の所有者が入居者に退去してもらうようお願いしても、借主側(入居者側)の意向が優先されます。

これに対し、定期借家契約は最初に定めた契約期間が優先されます。

全てではありませんが、どちらかと言うと貸す側の意向が優先されるのです。

2000年3月からようやく定期借家契約が使えるようになりましたが、リロケーションが普及したのも定期借家契約が使えるようになったことが大きいと言えます。

リロケーションの「転貸借方式」とは

もうひとつ書き加えておきたいのが、リロケーションは物件の委託管理に転貸借方式が使われているということです。

不動産の所有者である転勤予定者は、リロケーション会社(管理会社)に不動産物件を貸すことになります(賃貸契約を締結)。

次にリロケーション会社は、借り受けた不動産物件に入居者を住まわせるわけなので(転貸借する=借りた不動産を又貸しする)、そこにも別の賃貸契約が発生します。

ただ転貸借方式にすることで、入居者が家賃を滞納した時でも、所有者にいちいち伺いを立てずに支払い請求や内容証明を送れます。

つまり、リロケーション会社は入居者管理がしやすくなり、不動産所有者は入居者の管理に煩わされることがなくなるのです。

一般的な賃貸契約では代理委託方式がとられますので、管理会社が仲介しても賃貸契約を交わすのは不動産所有者と入居者です。

もちろん代理委託方式でも入居者管理はできますが、やはり転貸借方式のほうが圧倒的に入居者管理はラクにできます。

このようにリロケーションは「定期借家契約」と「転貸借方式」があって、はじめて成立したサービスだと言えるのです。

リロケーションのメリット

リロケーションサービスは特に首都圏を中心にニーズが高まっており、リロケーションに参入する管理会社の数も増えてきています。

そこでリロケーションのメリットについて、「貸す側」と「借りる側」それぞれの立場からみたメリットを考えていきます。

貸す側から考えたメリット

不動産を貸す側からみたメリットにはどんなものがあるでしょうか。

1.賃貸期間が決まっている

リロケーションは定期借家契約に基づいているので、契約期間の遵守は大事です。

定期借家契約は、普通借家契約のように借主の都合で契約期間が延長されることもありません。

定期借家はどちらかと言うと、貸す側の立場を考えて作られた契約なのです。

転勤が終わり、いざその家に戻ろうと思った時に、入居者に退去してもらえない、自分の家に帰れない、という事態を避けることができます。

2.転貸借方式をとるので、留守中も入居者の管理など全てを任せられる

リロケーションサービスの入居者には少ないようですが、もしも入居者側に家賃滞納などが続いた場合は、管理会社が適切に対応してくれます。

したがって留守中(転勤中)も安心して自宅を貸せます。

3.付帯サービスの充実

リロケーションサービスは専門の管理会社を通じてサービスを受けるのが一般的です。

管理会社は転勤者をサポートする様々な付帯サービスを用意しており、家の修繕など非常に行き届いたサービスを受けられます。

4.リロケーションには管理主体のサービスもある

転勤などで家を空けるが、自宅を他の人に貸したくないという方も中にはいらっしゃると思います。

でも家は住まなくなるとすぐに傷んできてしまいます。

このような場合、物件を貸し出さず、空き家の管理やチェックを代行するだけのサービスを用意している管理会社もあります。

他人に家を貸したくはないが、そのまま放置しておくわけにはいかないというオーナーにおすすめです。

借りる側から考えたメリット

次に、借りる側から見たメリットにはどんなものがあるでしょうか。

1.借りれる期間が決まっている

借りる側にとっても、借りれる期間が決まっているリロケーションはメリットに感じることが多いようです。

リロケーションで住宅を借りるということは、期間がある程度決まっている方が多いと思います。

特に転勤予定とリロケーションの期間がある程度合致していることは、赴任予定の方の安心材料となります。

2.家賃相場は普通借家物件より割安

リロケーションは定期借家にもとづく契約ですが、一般的な家賃相場は割安なのが普通です。

なぜなら定期借家契約は普通借家契約より期間が決められるなど、制限が多くなるからです。

入居者も制限を理解して契約をしますが、こうした理由から賃料は相場より割安になる傾向があります。

3.リロケーションは良質な住宅を確保しやすい

リロケーションで入居募集する物件は良質な住宅が比較的多くなります。

また通常の賃貸物件よりも、分譲マンションや注文住宅であるケースが多いため、設備などが良いものが付いている場合が多くなります。

4.一戸建てなどの賃貸物件が多いため、家族で住むのに適した物件が多い

リロケーションに出される物件は、転勤や海外赴任で一時的に賃貸に出すことになった家が多く、所有者は帰任したらまた住むつもりの方がほとんどです。

そのためリロケーションの物件は間取りがよく考えられた、ファミリーで使える一戸建てが多いです。

リロケーションのデメリット

もちろん、リロケーションにもデメリットが存在します。

はじめてリロケーションを使う場合、どのような点に注意すれば良いでしょうか。

貸す側から考えたデメリット

1.契約更新(変更)はできない

定期借家契約は期限を決めて物件を貸しますので、一般賃貸契約とは違い、契約更新というものが存在しません。

一般的に1~2年で更新できる契約に慣れているからでしょうか、契約更新がないことが家を貸す側にとってもデメリットと感じる場面はあるようです。

例えば、転勤などでリロケーションを利用してみたものの、転勤の期間が定期借家契約した期間より短くなった場合などは非常に困ります。

ただ、やむを得ず契約の解除を申し出る場合、最低でも6ヶ月前に入居者に通知が必要なのですが、最近では3ヶ月前に解約通知ができる管理会社もあります。

また入居者の事情により明け渡しができない場合は、解約期日の4ヶ月目以降は明け渡し保証金として賃料相当額が支払われる管理会社もあります。

帰任時期が早まった場合、どうなるのかは管理会社によって対応差があります。

候補にあげた管理会社には事前に確認しておく方が安心です。

2.貸せる期間は延長できない

期間延長できない点も、一般的な賃貸契約との違いからデメリットだと感じることがあるようです。

ただし最近ではリロケーションサービスが充実しており、最低契約期間を2年を経過したものについては、管理会社によって自動的に契約期間が延長されるものも出てきています。

つまり管理会社でもデメリットと感じる部分を少しでも失くす方向で考えているようです。

3.手数料が一般的な賃貸契約より割高となる

リロケーションは管理費用(手数料)が普通賃貸契約より割高となります。

その大半が物件の価格にかかる管理手数料で、10%前後かかると言われています。

借りる側から考えたデメリット

1.契約更新(変更)はできない

前述のようにリロケーションには契約更新という概念が存在しませんが、契約更新がないことがデメリットと感じる場面が物件を借りる側にもあるようです。

ただしリロケーションは一般的な定期借地権とは違い、契約期間は長くても数年で終了します。

契約更新がないデメリットは物件所有者(貸す側)より少ないのではないでしょうか。

2.借れる期間は延長できない

リロケーションは契約期間を延長することはできません。

契約期間が最低2年を経過した場合には、自動的に契約期間が延長されるものも出てきていますが、この自動延長は管理会社と転貸借契約を済ませた貸す側が使えることなので、入居者には関係ありませんので注意して下さい。

3.中途解約は難しい

リロケーションは賃貸借契約として定期借家契約を締結しますが、定期借家契約は借主に急な転勤・病気・介護といった事情がない限り、中途解約はできないことになっています。

4.入居条件や審査が厳しくなる

リロケーションは一般的な賃貸契約とは違い、入居条件や審査が厳しくなる傾向があります。

ただリロケーションサービスを利用する方は、同じく海外赴任を控えているなど社会的地位もしっかりしている方が多く、入居条件や審査が厳しくなることをデメリットと感じる方は少ないようです。

リロケーションにかかる手数料

リロケーションは不動産サービスの中でも新しい分野であり、普通賃貸契約とは違い、各リロケーション会社でも具体的な費用はウェブサイトに開示していません。

しかし手数料の一番の違いは毎月かかってくる物件管理費で、その他の費用は全体から見ると決して多くはありません。

なお問題の物件管理費ですが、賃料の10%前後というのが相場のようです。

ここでは、おおよその参考値を掲げておきます。

リロケーションに掛かる手数料

  • 管理委託申込料  1万円前後
  • 契約時事務手数料 賃料の約1ヶ月分
  • 保証料      賃料の約1ヶ月分
  • 管理手数料    賃料の10%前後

その他の費用

  • 送金手数料
  • 修繕費用など

リロケーションの依頼方法とその流れついて

最後に、リロケーション会社の選定から依頼者が転勤してから帰任するまでの標準的な流れを、時系列に沿ってまとめましたので参考にしてみてください。

流れ1)リロケーション会社の選定

まずはリロケーション会社の選定です。

最近では国内転勤だけでなく海外赴任に強い会社もありますので、自分の条件に合いそうなところを数社ほど選び、比較検討していきます。

なお首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)や関西圏(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)の物件であれば需要も高く、「リロの留守宅管理」のような賃料査定サービスや、マンションのリロケーションに特化した「マンション貸す.com」のような一括査定サービスもありますので、こうした無料査定サービスを使って業者を絞り込むのが効率的な方法です。

そして候補とした会社とは実際に面談してみると良いです。

なぜなら業界自体がまだ新しく、不安な業者が紛れている恐れも考えられるからです。

面談内容や最終的な見積もり額はもちろんのこと、留守宅を任せることになるので、信頼できる管理会社を選んでいきましょう。

流れ2)契約

  1. 募集条件(賃貸料、敷金、礼金、契約期間)の決定
  2. 入居者の募集の実施と募集状況の報告
  3. 入居者の決定
  4. 賃貸借契約の締結
  5. 入居開始

募集条件の決定から入居開始まで、大体この順番で行われます。

進捗度合によっては、途中段階で依頼者の転勤があるかもしれません。

流れ3)国内転勤・海外赴任中(貸し出し中)

家の貸し出しが始まれば賃料が送金されます。

また入居者の対応状況などが定期報告されます。

流れ4)入居者の退去と依頼者の帰任

  1. 契約解約依頼
  2. 物件損傷査定
  3. 入居者の退去
  4. 依頼者の帰任

家の状況によって、補修工事やメンテナンス工事が途中で入る場合もあります。

リロケーション まとめ

リロケーションは新しいサービスですが、企業のグローバル化に伴ってそのニーズは日本でも少しずつ広がりを見せています。

ただ同時に、新しいサービスがゆえの品質上のバラつきがあることも否めません。

リロケーションサービスを検討する時期は、転勤や赴任の準備で忙しい時期とかぶりがちだとは思いますが、後悔しないためにも面談だけはきちんと行い、納得して依頼できる会社を選んでください。


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