「実家を相続したものの、マイホームがあるので実家には住まない」
「親が老人ホームに入居し、実家が空き家になった」
などの理由により、実家が空き家になることがあります。
そこで、この記事では「空き家になった実家を売却した場合の税金の控除」についてお伝えします。
空き家は放置していると資産価値が下がる
空き家を放置していると、様々な問題が発生します。
- 水を流さないまま1カ月も経つと、排水の臭いが上がってきて家中が臭くなる
- 特に木造住宅の場合、人が住まなくなると傷みが早い
- 木は湿気に弱いため、こまめに空気の入れ換えをしないと、半年も経つと歪みが生じ、扉の建て付けが悪くなる
- 自宅からその空き家までが遠いなら、通うだけでも一苦労
- 空き家管理サービスもあるが、もちろん費用がかかる(相場は月1万円)
空き家は管理を怠るとあっという間に老朽化が進み、見た目もみすぼらしくなるため、無人期間が長ければ長いほど、いざ売却しようとした時には価値が下がっています。
また危険で景観を損ねる「特定空き家」に認定されてしまうと、固定資産税が最大6倍に跳ね上がってしまいます。
実家というのは思い出が詰まっている場所なので、売却するのは寂しいと感じられるのも分かります。
また長期入院している親にとって「自宅に戻る」ということが希望になっているのなら、実家は守っていくべきです。
ただ将来的に誰も実家に住む予定がないのなら、資産価値が下がる前に、なるべく早く売却されることをおすすめします。
実家が空き家になったら3年以内に売ろう!
では、いつまでに売却をしたら良いのでしょうか。
実は、空き家になったら3年以内に売却するというのが一つの目安になります。
なぜなら「マイホームを売ったときの特例」を使えるのが空き家になってから3年間だからです。
マイホームを売ったときの特例は、正しくは「居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除」といいます。
家や土地を売った時に購入額より売却額の方が高くなり、売却益(儲けたお金)が発生すると「譲渡所得税」がかかります。
しかし「人が住まなくなってから3年以内に居住用財産を売った場合には、売却益のうち3,000万円までは課税されない」というのが、マイホームを売ったときの特例です。
この特例の注意すべきは「居住用財産(マイホーム)に限られる」という点です。
つまり親が生きている間に空き屋になった実家を3年以内に売れば、3,000万円以内の売却益までなら親に譲渡所得税の支払い負担はないということです。
一般的な個人の家において売却益を3,000万円出すということは稀なケースなので、ほとんどの家庭でこの特例を活用することができ、譲渡所得税が非課税になります。
相続した実家や土地を売却したい場合は?
「両親が他界したことにより、相続した実家が空き家になっていて売却したい場合はどうなるの?」という方もいらっしゃると思います。
マイホームを売ったときの特例は「マイホーム」と題されているように、居住者が自宅を売却した場合にのみ適用されました。
そのため、これまでは相続した空き家や更地を売却した場合には「マイホームを売ったときの特例」を使うことはできませんでした。
しかし朗報です!
急増する空き家対策の一環として、新しく「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました。
この新たな特例により「相続した空き家や更地の売却の場合も、一定の要件を満たせば、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を使うことができる」ようになりました。
「マイホームを売ったときの特例」と「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」との違いは下記の通りです。
マイホームを 売った時の特例 | 空き家に係る譲渡所得の 特別控除の特例 | |
---|---|---|
適用対象者 | 居住していた個人 | 相続により被相続人居住用家屋と、その敷地を取得した個人 |
譲渡資産 | 家屋 家屋とその敷地 | 必要な耐震改修を行った被相続人居住用家屋または敷地(空き家) 被相続人居住用家屋を除却した後の敷地(更地) |
用途 | 居住用 | 相続発生時に被相続人以外に居住者がいなかったこと 相続時から譲渡(除却)時まで事業・貸付・居住用に使われていなかったこと |
譲渡時期 | 空き家になってから 3年経った年の12月31日 | 平成28年4月1日 ~令和5年12月31日 |
譲渡対価 | 制限なし | 1億円を超えないこと |
耐震対策のような一定条件さえ満たせば、両親の他界により相続した空き家を売却した場合も、3,000万円以内の売却益までなら譲渡所得税の支払い負担がかかりません。
せっかく両親が遺してくれた資産なので、こうした特例を上手に活用して、両親の治療や供養、あなたの未来のために資産を有効活用していってください。