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行政代執行とは?事例から考える空き家の費用負担と相続について

行政代執行

行政代執行というのは聞きなれない言葉かもしれませんが、税金を滞納し続けるとしばらく督促が続き、督促も無視し続けると最後には差し押さえの通知が届く、というのは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

差し押さえの通知が届いただけでは行政代執行とは言いませんが、役所が差し押さえに来た場合は行政代執行がなされたということになります。

このように行政代執行とは、行政上の義務を履行しない義務者の滞納相当分の資産を差し押さえることによって、滞納相当額を納めさせる行為を指します。

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これから増えてくる空き家の行政代執行とは

行政代執行とは

冒頭では税金の滞納の例で行政代執行を説明しましたが、2015年の5月からは「空き家対策特別措置法」が施行され、撤去義務を履行しない義務者に代わって、行政側が問題のある建物を強制的に解体撤去できるようになりました。

これも行政代執行の一つです。

もちろん全ての空き家が該当するわけではありません。

まず行政代執行を行う前に、自治体の判断で問題がある空き家を「特定空き家」とみなす必要があります。

自治体は特定空き家の所有者に助言・指導・勧告をし、それでも対応しない場合は代執行令書をもって所有者に通知します。

そして解体撤去(行政代執行)を行なうわけです。

どのような状態だと「特定空き家」となってしまうの?

行政代執行を避けるためには「特定空き家」と認定されないことが必要です。

特定空き家とは、安全上・衛生上・景観上に問題があり、放置すればいずれかならず崩れてくることが予測できる建物になります。

安全上・衛生上・景観上、撤去するのが望ましいと判断される建物とも言い換えられます。

また住宅を建てると、土地の固定資産税は最大で6分の1に減税されますが(住宅用地の特例)、平成27年度からは特定空き家に指定されると住宅用地の特例が使えなくなり、固定資産税が跳ね上がります。

もしも空き家を所有している場合には、特定空き家に指定されないように気を付けたいものです。

行政代執行の事例

ここでは空き家に伴う行政代執行の事例を4つほどご紹介します。

なお老朽化した空き家の解体撤去は、必ずしも空き家対策特別措置法に基づくとは限りません。

建築基準法で行政代執行する場合もあります。

※建築基準法の第9条12項には、空き家対策特別措置法と同じ条文が記載されており、同様の事案でも建築基準法で行政代執行したほうが良い場合もあるようです。

神奈川県横須賀市 2015年10月

この事例は、全国で初めて空き家対策特別措置法による行政代執行が発動したことで、記憶している方も多いのではないでしょうか。

解体撤去費用は約150万円とのことでした。

こちらは結局建物の所有者が特定できないまま、行政代執行した事案です。

奈良県桜井市 2016年1月

建築基準法で行政代執行が行われ、解体撤去費用は約250万円になりました。

この事例は「倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある状態」と判断され、解体撤去が行われています。

東京都葛飾区 2016年3月

この事例は空き家対策特別措置法が施行されて、はじめて所有者が特定できた事案です。

過去に地主との間に建て替え交渉が決裂したという経緯があり、借地上に建っている木造一戸建ですが、解体費用は約180万円かかったようです。

長野県高森町 2016年4月

木造一戸建ての住宅の事例です。

所有者は他界していましたが、相続人を特定できず略式代執行となりました。

建物全部を解体したのではなく、屋根と外壁の一部を撤去した形です。

かかった費用は約30万円とのことです。

行政代執行の費用は誰が負担?

空き家物件の解体費用は空き家の所有者に請求書が送られてきます。

もしも所有者がすでに亡くなっている場合は、相続人にやってきます。

行政代執行の費用から逃れることは基本的に不可能

空き家を撤去する行政代執行では、間違いなく費用がかかってきます。

所有者が不明の場合は一時的に費用の立て替えはしてくれますが、請求先が分かれば必ず請求書が届きます。

自治体によって対応に違いはあるでしょうが、所有する本人にお金が準備できなくても、行政は所有者の子などの住所を突き止めて、親の代わりに費用を請求する場合もあるようです。

法務局で登記簿も見当たらない物件なら行政もお手上げですが、今後は未登記の物件も少なくなってきます。

したがって行政代執行の費用から逃れることは、基本的に不可能だと思ったほうが良いでしょう。

行政代執行の費用負担を無視すると強制徴収の恐れもあり

行政代執行の費用は国税と同様の扱いになります。

国税を滞納すると、はじめに郵便で督促状が届き、その次は差し押さえの通知が届きます。

それでも応じなければ、財産の有無を調べられるのですが、財産が発覚すると財産を差し押さえられて強制的に徴収されます。

この場合の財産とは預貯金だけでなく車や戸建てやマンションも含まれるので、強制的に徴収されたくなければ、督促状が届く段階で役所の窓口に出向き、支払い相談をすることが必要です。

特定空き家は相続放棄も検討できる

国税と同様の扱いになるのが行政代執行の費用なので、相続放棄について検討する方も出てきます。

親が亡くなった場合、被相続人のプラスの資産も借金のようなマイナスの資産も全て相続する「単純承認」のほかに、「相続放棄」も選べます。

相続放棄は、全ての財産を相続しない「相続放棄」のほかに、被相続人のプラスの資産の範囲内でマイナスの資産を相続する「限定放棄」もあります。

特定空き家を所有する親がいる場合は「相続放棄」を選ぶことになるかと思いますが、たとえ「相続放棄」を選んだとしても、別の相続人が相続財産の管理ができるまでは、管理責任は引き続き行うように法で定められています。

空き家からそれほど離れていない場所に住んでいる場合は、たとえ「相続放棄」が認められても、自分ができる範囲で管理責任は果たすことが求められます。

所有者が不明であっても行政代執行は可能なの?

事例でも紹介しましたが、所有者が不明であっても行政代執行は可能です。

空き家対策特別措置法でも、所有者が不明だとしても行政代執行は行えるとの規定があります。

古い建物は未登記の物件が多く、現在まで特定空き家に指定された物件の大半が未登記物件ではないでしょうか。

何よりも、所有者がいないというだけで空き家を放置すると、公益に反した行為となってしまいます。

費用は行政負担(税金)になりますが仕方ありません。

もちろん所有者が登記上確認できても死亡している場合もり、相続手続きが完了しておらず親族に辿り着けない場合もあります。

ただ現在はマイナンバー制度が拡充に向かっており、登記情報との繋がりも整備されるようになるはずです。

したがって行政代執行の費用が行政負担(税金)となるケースは今後少なくなります。

空き家対策は国民レベルで考える時期に来ている

日本の人口は今後さらに減少していく予測なので、当然のことながら、空き家の数は益々増え続けます。

もはや空き家問題は空き家所有者だけが気を付けることではなく、国民全員にのしかかってくる問題です。

欧米では中古物件に価値を見出す傾向がありますが、日本は新築物件に資産価値を高く見出す傾向があります。

話は少しそれますが、2020年開催の東京オリンピックが決まるまで、都民や国民は開催地を東京とすることに、どちらかというと否定的でした。

被災地の問題も片付いていなかったので、ニュースのインタビューでも消極的な意見の方が多かったように記憶しています。

ところが2020年開催が決まると、コンパクトで良いと言っていたオリンピックが4兆円規模にまで膨らんでしまいました。

既存の施設をどこまで使い回せるか、そこに苦心するより、潤沢にお金が使えることを自慢するかのように新施設のオンパレードで、当初のコンパクト五輪の考え方はすっかり消えています。

この東京オリンピックの会場施設問題からも、私たち日本人の新築好きが現れています。

これでは空き家問題の解決は前途多難としか言いようがありません。

国民全体で空き家問題を解決していくためにも、既にある居住ストック資源(中古住宅)を最大限に活用し、新築は極力セーブすべきです。

そのぐらいの覚悟で対策しないと、空き家問題に生活そのものが食われてしまうかもれません。

空き家をみんなが集える空間にした豊島区の取り組み

空き家問題に対する新しい取り組みとして、豊島区居住支援協議会による「シングルマザーのための家」という空き室利用をはじめています。

豊島区居住支援協議会では、高齢者の夫婦が空いている部屋に大学生に住んでもらったり、自宅の一部をカフェやパン屋さんなどにして地域の人に来てもらったり、という取り組みを行っています。

大学生と同居する事例では、大学生によって高齢者をケアするという効果も生まれます。

また本が好きで蔵書がある方が、図書館として自宅を開放する「住み開き」を始めています。

これらは空き家予備軍の方たちが始めた取り組みの一つで、自身が高齢者となり、自宅がゆくゆくは空き家と化す日も遠くはないという現実を前に、今のうちから自分のプライベート空間をパブリックに使える場として、早いうちから他人にシェアしていこうという考え方です。

こうした取り組みの良いところは、ローコストで始められることです。

リフォームは空き家対策におすすめ

また技術的な面では、リフォーム工事をしておくと何年も貸せる家になり、空き家対策としておすすめです。

築年数が古い家の場合には耐震改修工事も必要かもしれませんが、一定の要件を満たした耐震リフォームであれば「住宅借入金等特別控除」や「住宅耐震改修特別控除」が適用され、最大10年間にわたって減税を受け続けることができます。

また決して工事費用は安くありませんが、断熱リフォームやエコリフォームなど、断熱性や気密性を重視したリフォームをすることで冷暖房費がかからない長寿命な家になります。

こうした省エネリフォームも一定の要件を満たせば、「特定増改築等住宅借入金等特別控除」や「住宅特定改修特別税額控除」が適用され、最大10年間にわたって減税を受け続けることができます。

また住宅ローン金利も優遇されますし、補助金をもうけている自治体もあります。

リフォームすることで特定空き家と認定されるのを防ぎ、なおかつ家賃収入を得ることが可能となるわけです。

(参考サイト)
リフォームも確定申告・年末調整で住宅ローン減税が適用される!

断熱リフォーム・エコリフォームで冬も夏も快適な家に!

行政代執行のまとめ

空き家対策特別措置法が施行されたばかりですが、私たちは近い未来、もう一度空き家問題に直面する時がきそうです。

上述のように、いま特定空き家に認定されている建物は、戦後間もない時期に建築された未登記物件がほとんどです。

ところが次代の特定空き家に認定される建物はほとんど登記済みです。

建物の所有者やその相続人もみんな特定されます。

さらに解体費は年々微増しています。

既に空き家を所有している方や相続予定の方は、リフォームするなり、売却するなり、何らかの対策を今のうちから考えておく必要があります。


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