「貸宅地(かしたくち)」とは、借地権のついている宅地のことです。
この記事では「貸宅地の問題点と効率的な手放し方」についてお伝えします。
貸宅地とは | 貸宅地の3つの問題点
貸宅地の3つの問題点
- 自由に使えないため、売りたくても売れにくい
- 利用権は相続されていくので、半永久的に借主の土地といっても過言ではない
- 低い地代で貸し出されているので、利益をほとんど生まない
通常、借地権の権利者(借り主)はその土地に自分で家を建てて住んでいるので、所有権は土地の貸主(オーナー)が持っていますが、利用権は借主が持っている状況です。
自分の土地でありながら自由に使えないという制限がかかるため、いざ貸宅地を売却しようとしても市場価値は低く評価され、売れないor売れても予想以上に低い価格となりがちです。
また困ったことに、契約時の貸主・借主いずれかが亡くなっても、貸宅地をめぐる法律関係はそれぞれの相続人に引き継がれます。
つまり借主側としては借りていた親が亡くなっても、その相続人である子供が貸宅地を引き続き利用する権利を主張できるのです。
これは実質的に考えると、貸宅地は半永久的に借主の土地といっても過言ではありません。
さらに貸宅地の地代の多くは、土地本来の価格からは考えられないような低額に抑えられています。
その理由としては、戦後特有の時代背景があります。
当時はまだ不動産を有効活用するための知識もノウハウも一般的ではありませんでした。
そのため「土地を遊ばせているよりは人に使ってもらった方が良いだろう」という気持ちで、貸宅地という形で土地を貸し始めました。
つまり土地で利益を得ようとはしていなかったので、地代は今では考えられないくらい低いのです。
貸宅地は不良債権のようなもの
貸宅地を土地活用の手段として考えてみた場合、実に不合理な利回りとなっています。
よくある広さと地代の事例
- 50坪
- 坪単価50万円
- 固定資産税は年10万円
- 年30万円の地代で貸し出し
土地全体の価格は2,500万円の価値があるのに、地代収入は30万円。
固定資産税が10万円なので、貸宅地としての運用では年間20万円の利益しかもたらされていないことになり、利回りは1%にも達していません。
株式や投資信託等の金融商品には、これ以上の利回りの商品はいくらでもあります。
上述のように、貸宅地は半永久的に貸し続けることになるので、この低収益状態を受け入れ続けなければならず、土地活用という観点からみると貸宅地は不良債権といえます。
なぜ貸宅地は相続時に子供に大きな負担をもたらすのか
「先祖から受け継いだもの」
「貸宅地があるからといって特に困ってはいない」
「土地をたくさん持っていることは資産」
こうした考え方がこれまでは一般的だったので、収益を生まない貸宅地も所有され続けてきました。
しかし2015年の相続税の改正により大増税時代が始まった今、これまでは相続税がかからないはずだった人にも課せられる可能性が出てきました。(→詳細は「なぜ相続税対策に土地活用がおすすめなのか?」参照)
収益を生まない土地にも関わらず巨額の相続税の負担が課せられる…貸宅地は相続する子供にとっては大きな負担となります。
土地は「量」よりも「質」の時代に変わったのです。
貸宅地の効率的な手放し方 | 等価交換とは
貸宅地の効率的な手放し方としては「等価交換」という方法があります。
一般的に、住宅地としての貸宅地であれば土地全体の価値を貸主が底地権(借地権のついた宅地の所有権)という形で4割、借主が借地権という形で6割を持っているとみなされています。
そこで自分の底地を借主に買ってもらうという方法です。
土地価格が1,000万円であれば、底地を400万円で買ってもらうのです。
しかし貸主側から買取を依頼すると足元を見られ、買取価格を下げられる恐れがあるのでストレートに言わない方がいいです。
では、どうしたらいいのか。
答えは「借主が家を建て替える時期を待つ」です。
せっかくなので、家を建て替えるこの機会に自分の土地を欲しくはないですか?
この先も地代をいちいち払い続けるのは面倒でしょう。
よろしければ今お貸ししているこの土地は60坪あるので、30坪を差し上げます。
そこに新しい家を建てられてはいかがですか?
その代わり残りの30坪はお返しください。
(坪数は減るけど、それでも自分の所有物になる方が将来自由に売却できるし有利かな…)分かりました、そうしましょう。
このように申し出がOKになれば、結果的に底地と借地権の割合が5:5で、あなたは底地を処分し、借主との関係を解消できます。
また貸主であるあなたは、本来であれば貸宅地における地主としての権利は4割にあたる24坪だけだったのに、等価交換によって自分の好きなように利用・売却できる30坪の更地を手に入れたことになります。
そして実質的には、相場の4:6よりも高い500万円という価格で底地を売却できたことにもなります。
以上が等価交換です。
繰り返しになりますが、等価交換を成功させるには話しを持ちかけるタイミングが最重要です。
貸主の相続が始まってから話を持ち掛けては、狙いを推測されてしまう可能性があります。
場合によっては「建物の取り壊し費用はこちらが持ちますよ」と一言付け加えてみるのもいいかもしれません。
多くの場合、建物の取り壊し費用を負担しても等価交換できる方が有利になるはずだからです。
建て替え時の取り壊し費用は本来は借主が負担すべきものなので、相手にとっては嬉しい申し出となります。
貸宅地まとめ
今回ご紹介した等価交換の他にも、不動産のプロである不動産屋に相談すればその時の状況に合わせて最適な方法を教えてくれます。
ただ不動産屋にも得意ジャンル苦手ジャンルがあるので、貸宅地に関してノウハウを持つ不動産屋を見つけることが肝心です。
- 等価交換あるいは貸宅地の売却を親身になって一緒に考えてくれる不動産屋を見つけること
- 所有する土地の正しい価値を査定してもらうこと
まずはこの2点から始めてみてください。